「心室中隔欠損を伴った肺動脈閉鎖症」は、「極型ファロー四徴症」と同じなの?違うの?
今回は「心室中隔欠損を伴った肺動脈閉鎖症」と「極型ファロー四徴症」の違いを中心に、これらの先天性心疾患の特徴と、手術方法についてまとめてみたいと思います。
ファロー四徴症とは?
- 肺動脈狭窄
- 心室中隔欠損
- 大動脈騎乗
- 右室肥大
の4つの特徴のある先天性心疾患を「ファロー四徴症」といいます。
「4つも?!」と思うかもしれませんが、この4つは相互に関係していて
肺動脈狭窄
肺動脈の入り口や、途中が狭くなり、血液が流れにくくなっている。
↓
心室中隔欠損
肺動脈が狭いため、右心室に入った血液が、右心室と左心室の間に開いた穴を通って、左心室へ
左心室から、大動脈へ
↓
大動脈騎乗
本来左心室から出ている大動脈が、右心室側にずれている。
↓
右室肥大
心室中隔欠損があるので、右室、左室の圧力がほぼ同じになる。
本来、右心室は肺に血液を送るだけなので、全身に血液を送らなければならない左心室に比べて圧力が低いのだが、心室中隔欠損で左心室とつながり、大動脈へ血液を送り出さなければならないため、左心室と同じくらい頑張らなくてはならない。
本来、右心室にはそれほどの力がないので、長い間この状態だと疲れてしまう。
肺動脈が無い心疾患
こども病院で先生から説明を受けるとき、使用されていたプリントには「ファロー四徴症」といつも書かれていました。
先生が言うのは、「これは古い病名、KENくんのは肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損なので厳密に言うと違うけれど、血液循環は同じだから」のようなことを言われ、
「ファロー四徴症は平均余命30歳」というようなことをネットで読んだので、「ファローよりも予後がいいってことなのかな?」といい方に解釈していたのですが、
よくよく調べてみると「肺動脈閉鎖を伴うファロー四徴症は、極型ファロー四徴症ともいう」らしく。つまり、KENのはファローより悪いってこと?
極型ファロー四徴症
- 肺動脈閉鎖
- 心室中隔欠損
- 大動脈騎乗
- 右室肥大
全部、当てはまっている気がする(・o・)
(※先に挙げたファロー四徴症の平均余命は古い資料で、その後の小児心臓外科手術の進歩はめざましく、改善しています。)
こども病院のサイトでは「心室中隔欠損を伴った肺動脈閉鎖」と「ファロー四徴症」は分けて書いてあるので、何か違いがあるはず!?
いろいろ調べてわかったのは
同じ(似ている)ところ
- 手術前の血液循環
- 手術方式
違うところ
- 大動脈のズレ方
- 発生過程
ではまず、違いから!
違い
本当に微々たる違いのようです。
結局、その後の血液循環や手術方法は同じなので、素人はそこまで考える必要はないのかな?って程度。
私は気になってしまう方ですが、気にしてもしなくても、大差ないです。
大動脈のズレ方
- 大動脈が右にズレる
→肺動脈閉鎖 兼 心室中隔欠損
肺動脈閉鎖 兼 両大血管右室起始症 - 大動脈が上にズレる
→ファロー四徴症
「両大血管右室起始症」は肺動脈、大動脈ともに50%以上が右室から出ているものをいうそうです。
なので、肺動脈が右室側にずれているけど、50%に満たない場合は「肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損」となるのかな?と勝手に解釈しています。
実際、大動脈が本来ある位置より、右にズレたのか、上にズレたのかは、立体的に心臓を見てみないとわからないですよね(@_@)シロートが、この病気について理解しようとするとき、たいてい平面図で理解しようとしますから・・・でも、実際の心臓は3次元なんですよね。
発生過程
「肺動脈閉鎖」は、妊娠3週〜4週頃、心臓ループの形成段階で起こるようです。肺動脈が、できなかった→右室に集まった血液が左室に流れるため、その後心室中隔を閉じきれなかった。
「ファロー四徴症」はそれよりもちょっと後、妊娠7週頃、肺動脈と大動脈が分離、弁が形成される段階でのミス。
らしい・・・ネットサーフィンしながら、なんとなくこのような理解になったのですが、違ったらごめんなさいm(_ _)m
息子の場合は、最初の手術で胸を開いたとき、肺動脈は名残はあったけれど、右室につながる部分は目で確認できないくらい「無かった」そうです。
とすると、もともと「無かった」のか、「極度の肺動脈狭窄」で使われないうちになくなってしまったのか・・・?
考えても仕方のないことですが。
同じところ
手術前の血液循環
全身から戻ってきた酸素の少ない血液(SpO2=60)は、肺へ向かわず、心室中隔欠損を通って、肺から戻ってきた酸素いっぱいの血液(SpO2=100)と一緒に大動脈へ(SpO2=80)。大動脈から全身へ。
途中、動脈管を通って肺動脈へ流れ、肺できれいになって、心臓に戻る(SpO2=100)。でまた、全身から戻ってきた酸素の少ない血液(SpO2=60)と混ざって、大動脈へ(SpO2=80)。大動脈から全身へ。
全身をめぐる血液も、酸素が少ない状態(SpO2=80)。
という感じで、血中酸素濃度はどうしても80前後になります(普通の人は100。95切ったら失神)。
これが高くなる(90超えるとか)と、肺に血液が回りすぎている→心臓に負担がかかる→心不全。
低くなる(70切るとか)と、肺に行く血液が少ない→全身へ行く血液の中の酸素の量が極端に少ない→チアノーゼ。
の危険があり、状態を改善するために、在宅酸素療法やカテーテルアブレーション、開胸手術などが必要になります。
※動脈管は通常生まれてすぐ閉鎖します。肺動脈閉鎖症の子は、これが閉じてしまうと肺に血液が流れなくなってしまい、命に関わるので、動脈管を開いておくための点滴をします。点滴なしで自宅へ帰るためには、動脈管の代わりとなる血管(シャント)を埋め込む手術をしなければなりません。
手術方式
根治術は、ラステリ手術という術式です。心臓を通常の形にします。
術後は、血中酸素濃度が100になります。
ただし、ラステリ手術で肺動脈を建てる際、使用するのは人工血管です。人工血管は成長しない&劣化するので、10年ごとぐらいに交換が必要になります。